学生たちのひと夏の恋が描かれる恋愛アドベンチャー。シナリオに重点が置かれ、選択肢は必要最低限。ほかのキャラクタに目移りすることなく、攻略したいキャラクタに好意的な選択肢を選んでいれば、望んだエンディングにたどり着ける。シナリオはそれほど長くはなく、30分〜40分程度の共通ルートがあったのち、各ヒロインのルートへ。1ルートにつき1時間ほどで、総プレイ時間は3〜4時間程度となっている。中心となる登場人物は六人。主人公の月人をはじめ、魅力的なキャラクタばかりだ。普段は明るく穏やかな学園生活を送っているが、実はそれぞれ悩みや過去を抱えている。そんな多感な思春期の少年少女たちの心の機微が、とても丁寧に描かれている。月人とヒロインの甘酸っぱいやり取りはもちろん、男の友情などもしっかりと描かれ、読み応えがある。基本的に主人公・月人の視点でストーリーは進むが、要所要所で視点がヒロインへと移行する。ここでヒロインから見た月人の人となりや、彼に対する思いなどがわかる。シナリオを読ませる上でわかりやすく、好感が持てる。
グラフィックも印象的。立ちCGには衣装パターンが何種類もあり、イベントCGも恋愛アドベンチャーらしいもので、見ていて大いに楽しめた。また、透明感溢れる色の塗りは、「Imperfect Blue」の世界観によくマッチしていると思う。もうひとつ印象的だったのがキャラクタボイスだ。それぞれのキャラクタによく合っており、違和感というものを感じなかった。フリーソフトのアドベンチャーゲームで、これほどボイスがしっくりくるゲームは、筆者は初めてかもしれない。それほど声優陣の演技がすばらしかった。
何十時間もかかる長編ではなく、気軽にプレイできるところも個人的にはうれしい。シナリオ、グラフィック、キャラクタ、システムと、丁寧に作られている良作だ。すべてのエンディングを見たあとに読める後日談は、イベントCGまで用意されている力に入りよう。プレイする方は、このゲームの隅から隅まで、すべてを堪能していただきたい。
(早川 陽子)