プレイして感じたことは、とにかく「怖い」ということ。日本的な怪談ならではの背筋が寒くなるような演出の数々に、ひたすら恐怖の連続だった。特に「音」を使った演出が巧みで、黒電話の音、カラスの鳴き声、女の子の声、さまざまな音やBGMに戦慄させられた。グラフィックによる視覚的な演出も見事。ところどころに挿入される実写のオブジェクトや背景がこれまた怖い。立ちキャラクタのイラストは動きのバリエーションに乏しいものの、表情の変化が豊かで、ぞっとするような顔などもあった。
エンディングは複数あるが、1ルートは30分から1時間程度と決して長くはない。しかし、その限られたシナリオの中で、この恐怖の連続は本当に見事だと思う。序盤から鳥肌が立ちっぱなしで、恐怖でおののきながらも「人を怖がらせるツボを心得ているな」と心から感心した。
「最上邸」では、たとえ無事屋敷から脱出して生還しても、すべての真相がわかるわけではない。この屋敷に隠された真実を解き明かすには、真相エンドにたどり着かなければならない。しかし、あまりに怖すぎて、個人的には生還エンドを見たあと、真相を知るために再び最上邸に戻るのが嫌で嫌で仕方なかった。それくらい怖かったのだ。しかし、生還エンド後に、ゆかりが「まだ何にも明らかになっていない」と言うので、仕方なく戻ることになるのだが……。
おそらく一発で真相エンドにたどり着くのは至難の業。しかし、周回を重ねてゆけば、すべてのエンディングを見るのはそれほど難しくない。中編程度の長さのシナリオの中に、恐ろしいほどの恐怖が詰まっているので、特にホラーが好きの方には、ぜひプレイしていただきたい作品だ(絶対に失望することはないと断言できる)。秋の夜長に、最恐最悪の恐怖体験をしてみてはいかがだろうか?
(早川 陽子)